「最期はどこで」「延命治療は」 長寿研が高齢者27万人を調査へ
国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)などのグループが今秋、全国の三十万人近い高齢者を対象にした大規模な生活実態調査を始めた。住み慣れた場所で最期を迎えられるようにと国が旗を振る「地域包括ケアシステム」の構築に向け、課題を探ることなどが狙い。こうした調査は全国で例がなく、施策づくりに悩む自治体が熱視線を送っている。
グループは、センターの近藤克則老年学・評価研究部長(58)=千葉大教授=が代表を務める「日本老年学的評価研究」(JAGES)。これまでも三年に一回のペースで高齢者の調査を続けており、全国の自治体の施策に生かされてきた。
今回の調査は愛知、三重、静岡、長野など十七都道府県の約二十七万人を対象に実施する。前回(二〇一三年度)の約二十万人を上回り過去最大。要介護認定を受けていない高齢者に郵送でアンケートし、心身の状態や、過去のさまざまな人生経験、生活習慣などを調べる。十月から郵送を始めており、一七年度にかけて回収、分析する。
新たにテーマに据えた「地域包括ケアシステム」は高齢者が可能な限り住み慣れたところで自分らしく暮らしていけるよう地域で包括的に支援サービスを提供する体制のこと。団塊世代の八百万人が七十五歳以上となる二五年をめどに構築するよう厚生労働省が全国の自治体に求めている。市町村規模で地域事情に応じたきめ細かな対応が求められるが、具体的にどんな施策が有効か、各地で頭を悩ませているのが実情だ。
調査では▽人生の最期はどこで迎えたいか▽老人ホームや高齢者向け住宅に住もうと思うか-など、サービス需要の傾向が分かる多くの問いを盛り込んだ。自宅での最期を望む声が多数なら在宅支援を、専用施設入居の希望が多ければ施設の充実が課題だと分かる。
また、町内会活動など地域づくりへの高齢者の参加状況と健康状態の関係も調べる。参加に熱心な人ほど健康状態も良いことが予想され、データとして明確化することで地域づくりの推進につなげてもらおうとの意図がある。
高齢者交流施設の増設を進めている愛知県武豊町の飯田浩雅福祉課長(52)は「調査結果を参考に町として実態をさらに見極め、政策につなげたい」と期待。近藤代表は「地域の実情に合わせた医療と介護の施策を実施するため、根拠になる地域差のデータを示したい」と話している。 (社会部・室木泰彦)
中日新聞プラスWeb http://chuplus.jp/paper/article/detail.php?comment_id=423289&comment_sub_id=0&category_id=112&from=news&category_list=112 投稿日:2016年12月24日夕刊 |