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岩沼プロジェクト

東日本大震災による被災から月日が経過する中で注目されてきたものの1つに「絆(ソーシャル・キャピタル)」があります。被災地で復旧復興に尽力してきた方々からは、ソーシャルキャピタルの重要性を物語る事例や体験が数多く報告されてきました。岩沼プロジェクトでは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、厚生労働省・文部科学省科学研究費等の研究資金を受けて、東日本大震災により甚大な被害を受けた宮城県岩沼市との共同研究を実施し、「絆(ソーシャル・キャピタル)」が、被災地に暮らす高齢者の健康に及ぼす影響を学術的に検証してきました。本プロジェクトの特徴は、震災後のみならず震災前のデータが収集されていたことです。これにより、被災前の要因の影響を考慮した上で、被災による健康被害の発生やその緩和要因を検証することが可能となりました。
本プロジェクトでは、これまでの研究成果から得られた知見をまとめ、減災に向けた手がかりと今後の課題を探ります。

宮城県岩沼市と東日本大震災について
(2013年7月31日現在、宮城県Webサイトより)

■  位置・地勢
  • 宮城県仙台市の南17.6kmに位置
  • 市の東部は太平洋岸、西部は山岳地域
  • 仙台空港が置かれ、臨空工業団地が発達
■  震災被害
  • 死者・行方不明者187人
  • 全壊・半壊・一部損壊5,428棟
  • 市域面積の48%が浸水、多くの農地と工業団地内の200企業に甚大な損害(広報いわぬま2011年5月号)
 

プロジェクト概要

JAGES2010をベースラインとするパネル分析および悉皆調査データを用いた他地域とのベンチマーク

  • 宮城県岩沼市の全高齢者を対象とするJAGES2010調査を実施しました。(2010年8月)
  • 東日本大震災が発生し、太平洋沿岸の岩沼市も大きな被害が生じました。(2011年3月)
  • 全高齢者を対象とするJAGES2013調査を実施しました。パネル分析により、被災規模と健康被害の関連、震災前のソーシャル・キャピタルと震災後(2013年)の健康状態の関連等を検証しました。また、横断データを活用して、健康状態等について他のJAGES2013自治体との比較を行いました。(2013年10月)

専門職者等に対するヒアリング

  • 保健師、NPO職員、社会福祉協議会職員、新聞記者等にヒアリングを行い、ソーシャル・キャピタルと震災後の健康や復興の関連について地域の実態を把握しました。


 

実施体制

岩沼市と日米の研究班による共同事業

  • 岩沼市、東北大学歯学研究科、ハーバード大学公衆衛生大学院、日本福祉大学健康社会研究センターの4者間で研究協定を締結しました。
  • 調査方法等は、各大学の研究倫理委員会の規定に従うものとし、岩沼市より承認を得ました。

心身の健康に問題がある方への対応

  • 岩沼市健康保険部介護福祉課が心身の健康に問題がある方の対応を担います。調査票および同意書に担当課の連絡先を明記するだけでなく、訪問時に不調を訴える回答者がいた場合は研究班を通して担当課に連絡します。
 

活動実績

2013年3月22日 朝日新聞仙台総局 記者インタビュ―

復興のスピードを規定する要因

  1. 強力なリーダーシップ。しかし、行政単独の意思決定は、住民の反発を招く。
    • 住民の意見を十分に聞かないまま、コンパクト・シティ構想を進めようとした町では、住民が行政に反発し、意見収集のためのアンケート調査すら行えない状況である。
  2. 震災前から行政との関係が良好であった地域は復興が早い。
    • 岩沼市の津波被災地住民は、震災前から行政との関係が良好であったために、玉浦西地区への集団移転の合意形成が早く済んだ。
  3. 共通の話題・経験・目的を持つ地域は、住民の結束が強く、復興の進展が早い。
    • 牡鹿半島内の鹿立(すだち)地区のように、牡蠣やワカメの養殖など、集団で漁業を営んでいた地域では、住民の連帯感が強く、復興が早い傾向にある。(コミュニティが全滅した地区は当てはまらない)
    • 南三陸町の馬場中山地区は、ワカメや牡蠣の養殖を行っていた地域である。震災後は、住民が仮設住宅建設のための私有地を提供し、自分たちで重機を使って建設用地や道路を造成した。(住民組織「なじょにかなるさプロジェクト」として現在も活動中)

2013年5月25日 国際シンポジウム

報告者:Ichiro Kawachi先生(Harvard University)、澤田康幸先生(東大経済)、相田潤先生(東北大歯)
司 会:近藤克則先生(日本福祉大学)

Ichiro Kawachi先生: “Social Capital and post-disaster resilience”
社会的つながりは “informal insurance”であり、災害の被災者はそこから経済的、情報的、情緒的サポートを引き出すことができる。例えば、1995年に発生したシカゴ熱波の死傷者が社会的交流の乏しい高齢者に多かった。

澤田 康幸先生:「災害とソーシャル・キャピタル」
マクロ経済学の領域では、ソーシャル・キャピタルが市場取引や政府の公共財供給を補完するなど、経済発展に寄与することが示されているが、災害からの復興においても、人々の共助(ソーシャル・キャピタル)が市場の役割を補完すると言われている。経済実験手法を用いて、岩沼市におけるSCの効果を検証することが可能。

相田 潤先生:「東日本大震災被災者の仮設住宅の入居方法,ソーシャル・キャピタルと健康」世界各国で発生した地震、洪水、ハリケーン、暴動(人災)後に実施された研究から、復興および災害後の健康保護にとってソーシャル・キャピタルの役割は重要であり、ご自身も震災から約1年後に岩沼市で調査を行い、ソーシャルサポートの授受が多い人ほど、精神的ストレスが弱いことを示した。


2013年5月29日 岩沼市長インタビュー

岩沼市の集団移転が円滑に進んでいる理由
  1. 避難所から仮設住宅までコミュニティ単位で生活してもらっていること。
    • 避難先を被災直後の玉浦小学校、玉浦中学校、仙台空港ビル等から市民会館や総合体育館に集約する際に集落単位で部屋を取ってもらった。
    • 市民会館の館長がリーダーシップを発揮し、集落代表者の意見をまとめていた。岩沼では避難所で警察沙汰になるような事態が一切なかった。
    • 仮設住宅への集団入居は、単独入居に比べて入居時期が1ヶ月遅れることもあったそうだが、集団入居を選んだ人が多かった。これが次の集団移転にもつながっている。
  2. 集団移転先を決める際に、集落代表者がそれぞれのこだわりに固執しなかったので、意見が一致し、移転先を1か所に集約できた。
    • 各住民の入居箇所は町内の人と協議の上で決定した(対人関係の問題等を考慮)。
      *健康福祉部長による補足:「仮設住宅の部屋割りの際にも大変苦労した。対人関係の問題と世帯人数を考慮して、適切な部屋を割り当てなくてはならない(仮設住宅は注文住宅ではない)。」

2013年7月21日 Daniel P. Aldrich先生を招いた勉強会

復興の決定因に関する5つの理論(先行研究)
  • お金(保険、預金、NGOの援助、政府予算)
  • ガバナンス(首長や大統領が復興をどれくらいうまく統率したかや、政治腐敗の程度)
  • 災害によるダメージのレベル
  • 人口密度(人口密度が高いと復興プロセスが遅くなる)
  • 不平等のレベル(貧富の差が大きいところでは、復興が難しくなる)
Daniel P. Aldrich先生の研究知見
  1. 近所の団結
    ハイチにおいてコミュニティパトロールができたところでは、略奪、暴動、犯罪を抑えられた。フリーライドをいかに克服するかが大事。結びつきが弱く信頼が低いと集合的行為を起こせない。
  2. 非公式の保険
    ニューオーリンズではガソリンスタンドや食料品店、学校、病院、保育所などがすべて閉鎖され、近所の人から分けてもらう必要があった。人間関係に投資し、近所の人との関係を作っておく必要がある。

2013年10月4日 岩沼市との研究協定締結式

質問紙調査、訪問聞き取り調査などの各種データに基づく介護予防施策の実態と震災からの復興状況を分析する共同調査研究事業に取り組むために、岩沼市・東北大学大学院歯学研究科・Department of Social and Behavioral Sciences, Harvard School of Public Health・日本福祉大学健康社会研究センターの4者間で研究協定を締結した。
井口経明様 (前宮城県岩沼市長)と小坂健教授(東北大学大学院歯学研究科)
 
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